「オーダーメイドの民主化」を掲げ、最短1週間で高品質なオーダースーツを届けるブランド「KASHIYAMA」。オンワードホールディングスグループの一社である、株式会社オンワードパーソナルスタイルが手掛ける同ブランドは、全国64店舗を構え2024年度の売上高は昨対比137%の62億円を突破した。

「KASHIYAMA」は2024年8月よりローカルミエルカ有料版を導入したことで、Googleビジネスプロフィール(GBP)経由での予約数が約3倍にまで増加。表示回数、サイトへのクリック数、予約数、通話数などの数値も軒並み向上するなど、着実な成果を上げている。

DX div.大井綾子氏と池松鷹也氏、そして営業本部EC販売セクションの曽根原健氏に、ツール導入の背景や苦労話など、今回の成果に至るエピソードを伺った。

前任者の退職で判明したGBP運用の深刻な課題

オンワードパーソナルスタイルは「KASHIYAMA」の立ち上げ当初から、「ローカルミエルカ」無料版を導入しGBPの運用を実施していた。しかし、運用を一手に担っていた前任者が2023年12月に退職後、同社は深刻な状況に直面したという。業務は曽根原氏が引き継いだが、事業拡大に伴う店舗数増加とタイミングが重なることに。

曽根原氏一人のリソースでは、店舗情報の更新、口コミ返信、効果計測、順位向上に向けた施策の実施は困難となってしまった。加えて、GBP運用において大きな問題も発覚した。

お客様からの口コミに返信できない状況を憂う現場の店舗スタッフが、個人のGoogleアカウントで口コミに返信しているのを発見したのです。確かに当時は、お褒めの言葉も厳しいご意見もすべてが放置状態でした。とはいえ、個人のアカウントがお客様対応するという状況を見て、企業としてなんとかしなければと危機感を抱きました」(大井氏)。

(写真左から)管理本部DX Div .ディビジョン長 大井 綾子氏、営業本部 EC販売セクション セクション長 曽根原 健氏


また、GBP運用においてはもうひとつ重大な課題と向き合う必要があった。それは、MEOの重要性を理解している社員がほとんどいなかったことだ。この状況に警鐘を鳴らしたのが、前職で広告代理店に勤務し、SEOやMEOに取り組んでいた曽根原氏だったという。

「競合他社はMEOに非常に力を入れていたのですが、曽根原がこのプロジェクトにジョインするまでそれに気づくことすらできませんでした。曽根原が全社向けの会議などで、『KASHIYAMA』におけるMEOの重要性を訴え続けることで、徐々に共通認識を形成していきました」(大井氏)。

ローカルミエルカはあらゆる点で「ちょうどいいツール」だった

課題が山積する中、まずは運用体制の基盤を整えるべく、本格的なツール導入の検討が開始されることに。2024年8月には、もともと使用していた「ローカルミエルカ」無料版を有料版へと切り替える意思決定がくだされたという。曽根原氏によると、導入決定の決め手は主に3点あった。

一つ目は「直感的な操作性」だ。現在、同社は本部のカスタマーチームがGBPの管理・運用を行っている。メンバーは必ずしもITに精通しているわけではなく、「ローカルミエルカ」の直感的に操作できるUI/UXは非常に魅力的だった。

二つ目の決め手は「機能と価格のバランス」だ。MEOツールの選定では他社の製品のデモなども試したが、「ローカルミエルカ」は機能・価格の両面で優れていたという。

「他のツールのデモなども試したのですが、いずれも多機能で当社では使いこなせないかもしれないという懸念がありました。その点、『ローカルミエルカ』は機能がシンプルで分かりやすく、今の私たちにとってちょうどいいツールだと感じました」(大井氏)。

「当社の状況的に、メンバーがすぐに操作方法を理解して使い始められるシンプルさは大きなメリットでした。導入価格もリーズナブルで、『ローカルミエルカ』は最適な選択肢でした」(曽根原氏)。


そして、三つ目の決め手は「手厚いサポート体制」だった。特に、営業担当者が実際に店舗へ足を運び、顧客として接客を体験した上で行われた改善提案は、強く印象に残っているという。

「Faber Companyさんは店頭に足を運び、接客を体験した上で改善点を示してくれました。当社の公式サイトを見て『こんなコンテンツを用意してはどうか』と、SEOの課題についてもアドバイスをもらいました。こうした点から、マーケティング会社として信頼できると感じたのです」(曽根原氏)。

全社への訴えかけと現場に即した運用で口コミを獲得

「ローカルミエルカ」の導入後、オンワードパーソナルスタイルはGBP運用体制の構築に乗り出した。「ローカルミエルカ」はブランド情報や店舗情報の更新、キャンペーンの投稿、商品情報の刷新など、正確な情報を顧客に告知するために利用している。「ローカルミエルカ」では、それぞれの情報を一括更新することも、店舗ごとに更新することも可能だ。特に一括投稿は、GoogleマップとYahoo!マップのどちらにも使用可能という点を、曽根原氏は高く評価しているという。

ツールの本格活用に伴い、同社は課題の一つだった口コミ返信について、ブランドとしての姿勢を統一するため「カスタマーチームに返信業務を集約する」というルールを設けた。その上で、Googleマップからの集客に欠かせない「口コミの獲得」に向けて、MEOの重要性が浸透していない社内の認識を変えていくことから始めた。

「曽根原は、半年に一度の社内会議などの場で地道な啓蒙活動を続けました。『私たちがライバル視している企業は、これだけ口コミを集めています。だからこそ、Googleマップ検索で上位に表示されるんです』と。SEOや広告と違って、MEOは多くの予算を投下すれば必ず成果が出るものではありません。逆に言えば、全社で一丸となって取り組むことで、成果を生み出すチャンスがあります。そのことを、根気強く伝え続けました」(大井氏)。

その努力が実ったのか、社内でも少しずつMEOに関する話題が増えていったという。意識改革に加え、口コミ獲得に向けて具体的な施策にも乗り出していった。

今年4月、ローカルミエルカCSご担当からインナーキャンペーンが効果的だとアドバイスをもらい、各店舗で口コミ獲得の目標を設定しました。これが起爆剤となり、口コミを集めるという文化がかなり定着していきました」(曽根原氏)

「口コミ獲得には、KASHIYAMAならではの課題と向き合う必要もありました。通常、オーダースーツは工場で製作されお客様に直送されるため、完成品を受け取るために店舗へ再来店する機会がありません。そのため、スーツの仕上がりを確認する前のタイミング、つまり来店時に口コミをお願いすることが難しかったのです。そこで、当社では商品をお送りする箱に同梱するご案内に、口コミをお願いするメッセージカードを追加する施策を始めました。口コミ投稿専用のWebページも作成し、そこへQRコードで誘導する流れを確立したんです」(池松氏)。

管理本部 DX・CSセクション セクション長 池松 鷹也氏

予約数は約3倍、通話数は1.5倍に増加

全社を巻き込んだ取り組みは、着実に数字となって表れた。ローカルミエルカ導入後、2024年8月から2025年8月までの期間で、GBP経由の予約数は約3倍に増加。マップでの表示回数、サイトへのクリック数、予約数、通話数など各種項目も、154%向上という目覚ましい成果を達成した。他のチャネルの予約数が減ったわけではなく、純粋にGoogleマップ経由での予約数が純増した形だ。

成果は数字だけにとどまらない。「ローカルミエルカ」の口コミ分析機能は、各店舗の口コミ件数の増加状況を日別で確認し、レポート方式でダウンロードができる。こうした機能で口コミを分析すると、顧客がKASHIYAMAの何に価値を感じているのかが見えてきた。

口コミを分析すると『親身に対応してくれる』『丁寧』といったキーワードが非常に多いことに気づきました。オーダースーツは敷居が高いと感じているお客様にとって、そのハードルを下げ、安心して相談できるスタッフの存在が心に響いているのだと再認識できました。

実は先日、店舗のエリアマネージャーが『Googleマップのコメントで、こんな風にお客様から声をいただきました』と、良い口コミをもらった店舗にフィードバックしている場面に遭遇したんです。その話しぶりに、口コミが自分たちのサービスへの自信や、今後の改善への意欲につながっているのだと実感しました」(曽根原氏)


約1年間の取り組みを経て、MEOを軌道に乗せたオンワードパーソナルスタイル。その過程において、Faber Companyは単なるツール提供者以上の存在だったと語る。

一番大きかったのは、何か困ったときにすぐに相談できるパートナーができたことです。最新のMEOやSEOの動向はもちろん、他社事例の調査や各種分析するツールの使い方など、自分たちだけでは得られない情報を気軽に聞けてとても心強かったです」(曽根原氏)。

現在、同社では口コミが重要であることが社内の共通認識となり、「ローカルミエルカ」で全店舗の口コミ件数の増加状況が共有できるようになった。それにより、本部と店舗が一丸となってPDCAサイクルが円滑に回り始めているという。次の展望として、曽根原氏は「サイテーション」の強化を挙げた。

「今後は、SNSやYouTubeなどGoogleマップ以外のプラットフォームでも、積極的にお店の情報を発信していく必要があります。この取り組みにGBPをうまく組み合わせられるよう、『ローカルミエルカ』を活用していきたいですね。ぜひ今後も、Faber Companyの皆さんの力を貸してください」(曽根原氏)。