iOS14のベータ版でお客様がApple Maps上の位置情報に企業のレビューを残せる機能を提供していることを、9to5Macが先週明らかにしました。Appleはこれまで、Yelp、TripAdvisor、Foursquareのレビューに頼ってきました。そんなAppleの位置情報上のレビューという分野への進出は、ローカルSEO業界でかなりの話題を呼んでいました。 

位置情報上に表示されるレビューについて豊富な経験を持つDavid Mihm氏とAaron Weiche氏にこの開発についての考えを聞いたので、ここで私の考えとともに紹介していきます。

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Appleのレビューはどのように機能するか

Mac iOS 14ベータ 6には、ユーザーが親指を立てたマークと親指を下げたマークを利用して、その場所のおすすめ状況を表示できる新しいUI(ユーザーインターフェース)が搭載されています。この評価システムはカテゴリーを区別することができるので、たとえ最高のサービスを受けられなかったとしてもユーザーはショップで購入した商品の品質を高く評価することができます。なお、現段階では、この評価UIは、地図上のすべてのPOI(地点)のうち、ごく限られたPOIにしか表示されません。」(9to5Macより引用)

どうやらAppleは、デバイス上の機械学習を使って、特定の場所を何度も訪れたことがあると判断すれば、POI評価の機会を提示しているようです。そして、実際にその場所を訪れたことのある人しか評価をすることはできないようです。

下の画像のように、評価基準については、他の多くのレビューサイトが使用している一般的な1つ星から5つ星の評価ではなく、親指を立てるか下げるかで評価を行うシステムを使用しています。評価は企業と、その企業が提供するサービスや製品の両方に適用されます。Facebookの「はい」または「いいえ」の表示形式に近いように見えますが、レビューされる追加内容の数に応じて、かなり詳細なデータを生成することができるようになっています。

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ローカル検索の専門家であるDavid Mihm氏は、「当然のことながらAppleは、幅広いユーザーから最高の集計データを得る方法を理解しています。単純な親指を上げる/下げるの方法で評価を求め、さらに体験の具体的な内容についてのレビューも求めるのです。これは、優良なレビューの投稿者や長文のレビューに偏ったYelpの傾向とは、限りなくかけ離れています」と述べています。

なぜAppleはレビューの分野に参入するのか?

Appleは世界規模の事業を展開している企業です。ほとんどの国に消費者を抱えていますし、消費者とサービスを提供する開発者の双方が、一貫して楽しめる顧客体験を提供したいという強い信念のある企業です。そのためか、他社に依存することをあまり好みません。ですが、検索ではGoogleに、レビューではYelpやTrip Advisorに依存しているのは明らかです。現在のレビューに関して事業を提供している企業の中には、Appleの顧客が求めるような、多岐にわたるローカルビジネスを世界規模で提供している企業はありません。 

「レビュー分野は、2番手の位置を狙うには非常に魅力的な分野です。いくつかの業界特有のレビューサイトを除けば、ほとんどの企業にとって本当に気になるレビューサイトはGoogleだけです。こうした動機に加えて、それほど大きな動きをしなくても、この分野での関連性を高めることができるだろうとAppleは考えているのかもしれません」とAaron Weiche氏は語りました。

噂にあるように、Appleがウェブコンテンツを利用するための独自の検索エンジンを作ろうとしているのであれば、ローカル検索はそのための重要な要素となります。Appleが他社の需要や利益に左右されない状況を作り、自分たちの運命をコントロールしたいと考えるのは理にかなっています。8年前にGoogle Mapsに代わる地図サービスの開発を決定したのもそのためでした。 

また、プライバシーへの懸念が高まる中、Appleが消費者に対してよりプライベートな選択肢を提供できる分野として、検索機能はうってつけです。

Appleが私のように、ローカル検索を今後数年間の検索の中で最も重要な要素と考えているのであれば、レビューの分野に参入する理由はそれだけで十分でしょう。

とはいえ、ローカル検索もレビューも難しい分野でしょう。

市場に影響を及ぼすのはいつ頃になるのか

Appleは、革新的な企業として知られているものの、基本的にはハードウェアとソフトウェアを地道に改良していくことで、その評判と市場シェアを獲得しています。いくつかの障害はあるでしょうが、Appleにとって重要な製品として認識されているのであれば、6ヶ月または1年のサイクルで、ゆっくりとした着実な改善が期待できるでしょう。

「Apple Mapsの展開時の精度を考えれば、すぐに完璧なものができるとはとても思えません。しかし、公開されているスクリーンショットを見る限りでは、この機能は大きな可能性を秘めています」ともMihm氏は語っています。

Mihm氏の発言にさらに付け加えるとすれば、AppleはApple Mapsを最低限の機能にするまでに約4年かけており、完全に便利になり多くの人に普及する製品なるのには6年を要しました。Google Mapsと比較して、現在の最大の欠点は、企業情報の不足でしょう。レビューは、この問題への最良の解決策となるのは明らかでしょう。 

企業が得られるものはなにか

Appleは、Googleとは異なり、自社製品の購入者のみにそのサービスを提供しています。その関心は消費者だけに向けられているので、マーケティング担当者や広告主の需要に大きく影響されることはありません。10億人以上のユーザーにどのような機能を提供することになろうとも、そのユーザーにしか提供されないのです。マーケティング担当者は、この方程式から取り残されていくことになるでしょう。 

Appleの位置情報サービスであるBeaconsはその顕著な例です。Appleは、Beaconsを世界中で使われる技術にすることもできましたが、結局は、その機能で事業を拡大することよりも、ユーザーとそのプライバシーを選択したのです。 

Mihm氏は「Apple Mapsの懸念点は、企業がモニタリングし、自社の評価に影響を与える必要がある『もうひとつのプラットフォーム』になってしまうことです。と指摘しました。

 最大の未知数は 、

“1) Appleがそのために必要な企業向けの機能を構築するか(現在の形のApple Maps Connectでは無理でしょう)、

“2)企業と顧客のエンゲージメントを容易にするために、GatherUpのようなサードパーティソリューションにプラットフォームを開放するか」

できることなら、Appleが少しでも企業に目を向け、このレビュー情報を企業が容易に入手できるようにし、企業が容易に対応したりモニターしたりできるようにしてほしいものです。しかし、企業が必要としている機能はこのバージョン1.0には含まれていないようです。

登場するかどうかは、誰にもわかりません。

レビュースパムとは

確かに、Google、Yelp、TripAdvisorなどの大規模で一般的なレビューサイトにとって、レビューフォーム上でのスパムは大問題です。とはいえ、Booking.comやOpenTableのように、条件に基づいてレビューを残すことを前提としている場合は、スパムの問題ははるかに少ないのです。 

Apple Mapsのような一般的な位置情報機能は、条件を必要とすることと、誰もがレビューを残せることとの中間点を見つけることができるでしょうか?

9to5Macの情報によると、マップが実際にその場所を訪れたことを「知っている」場合、レビューを残すことができるようになっているようです。購入するほど決定的ではありませんが、GoogleやYelpから要求されるものよりも訪問の「証拠」となります。明らかに、この要件だけで、場所の訪問を偽装することが難しくなるため、いくつかのスパムを抑制することはできるでしょう。

検証済みのデジタルIDは、スパムを最小限に抑えることができるもう一つの方法です。 David氏はこの点について次のように述べています。「評価と写真はApple IDにリンクされています。つまり、AppleはGoogleよりもはるかに強力なスパム検出機能を備えていることになるわけです。さらに、すべての写真は人間によって審査されます。つまり、うんちの絵文字や、これまで長年にわたってGoogle上で見られてきた無数の写真スパムが見られる可能性は低いということです」。

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もちろん、地理的な近さとApple IDを必要とするため、スパム行為はより困難になるでしょう。Appleは、どのような欠点があろうとも、家族的な空間を維持することには誇りを持っています。レビュースパムが困難という点は、実際に市場での差別化を図ることができる分野なのかもしれません。 

他のレビューサイトに与える影響はあるのか?

現在、Apple Mapの位置情報リンクをAndroidやWindowsのユーザーと共有すると、AppleはそのApple Mapの位置情報をGoogle Mapにリダイレクトします。10億人のユーザーがいるとはいえども、この方法が続くなら、Apple Mapのレビューを読んだり書いたりできる人は限られてしまうでしょう。 

Googleに関しては、iPhone上でのGoogle Mapsの存在感の大きさを考えればこの動きによる影響はあまりないと思われます。もしAppleがGoogleの検索ではなく独自の検索エンジンを作って利用することになったとしても、その影響はGoogleのレビュー生成能力に及ぶ影響はわずかなものになるでしょう。 

私の考えでは、この件で最も損失を被る可能性が高いのは、現在のAppleのパートナーであるYelpとTripAdvisorでしょう。この2社のうち、TripAdvisorは世界中に展開しており、Yelpは旅行や観光事業に特化していることから、この動きによる影響は大きくなりやすいのではないでしょうか。 

Mihm氏は、「これは、Yelpの事業価値に大きな影響を与えるだろう。Yelpは、Googleでのランキングに影響を与え続ける限り重要だが、最大の流通経路を失ってしまった。間違いなく最も影響力のあるYelpの評価は、Apple Mapsのリスティングと一緒に表示されていた」と、発言しています。

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Apple Mapsアプリで表示されるYelpのレビューは、企業のためのものです。

Yelpは長い間にわたって、ユーザー数が徐々に減少していましたが、Covid-19によってさらにその流れが後押しされてしまったようです。この事実は、Appleにとっても明らかなものだったはずです。

Yelpは、最近の四半期財務報告書で、過去3ヶ月間の独自のルートのアクセス数が、アプリ、携帯電話、パソコンのすべてのデバイスで、昨年よりも約37%減少したと述べています。YelpがAppleやBingなどの他のレビューサイトで読まれたレビューをどのようにカウントしているのかは不明ですが、Appleの読者を失えば大きく影響するでしょう。

Yelp Apple 成長率

しかし、それと同じくらいに重要なのは、レビュー数の伸びがここ数年で大幅に鈍化していることです。この四半期は特に厳しい結果となりましたが、レビュー数の伸びの低下は数年前から続いています。Apple Mapsは、一部のレビュアーをYelpに誘導しており、そのことがYelp独自のレビューサイトにアクセスするレビュー数の増加にさらに歯止めをかける要因となっている可能性があります。レビューの内容には再帰性が必要であることを考えると、これはYelpにとってはよくない流れでしょう。

まとめ

Weiche氏が最後に意見を聞かせてくれました。「今回の動きから、消費者のために別のレビューの場が必要かどうかを自問しましたが、その答えはイエスです。私が気になっているのは、Appleが他のレビューサイトの長所と短所を生かして、信頼できる質の高いレビューや顧客体験の情報源を構築できるかどうかです。企業も消費者も、そのようなサイトに惹かれるのではないでしょうか」。

Appleが位置情報からのレビューに分野に参入すれば、消費者、企業、その他レビュー分野の人々に大きな影響を与えることになるでしょう。しかし、その影響が目に見えるようになるまでには時間がかかり、その影響が完全に明らかになるまでには数年かかるかもしれません。

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この記事は許可を得て翻訳しています。

元記事は、GatherUp – Get Online Reviews & Customer Feedback で公開されたWhat Impact Will Apple Reviews Have?です。